聴覚障がい者の雇用には、日本語研修が不可欠です!
9月13日(木)・14日(金)の2日間、初台にある大手ガス会社さんからご依頼を受け、「聴覚障がい社員 日本語研修」を行いました。
障がい者の法定雇用率が上がり、聴覚障がい者の方々は大きな会社に事務職として採用されることが増えました。
車椅子のためのお手洗いを作ったり、スロープを作るなどのコストがかからないし 、
「聞こえないなら、筆談やメールすれば大丈夫でしょ?」
そう思って、聴覚障がい者を雇用する企業が多いからです。
採用してみたら、聴覚障がい社員のメールの文章に間違いが多いことに気づきます。
「部屋で パソコンがあります」
「橋に 渡ります」
このような文章を書くことが多いので、能力が低いと誤解をする方がたくさんいらっしゃいます。
でも、それは聴覚障がい者の方の能力が低いのではありません!!
手話と日本語の構造が違うためです。
★聴覚障がい者のための日本語講座の目的
1)聴覚障がい者の文章に間違いが多いのは、個人の資質の問題ではなく、「手話と日本語の構造が違うため」だと理解してもらいます。
2)間違いの多い助詞「は・が・を・に・へ・で・と・より・から・まで」について、「なぜ、ここで『を』を使うのか」を細かく一つ一つ、手話で説明します。
3)助詞だけではなく、尊敬語や謙譲語の作り方など、日本語の文法のルールを手話で説明します。
4)文法のルールがわかれば、間違いが減ります。
聴覚障がい者が自分の文章に自信を持って、社会の中で自分の力を十分に発揮できますように…
★今回のガス会社さんの研修科目
・「『は』と『が』の使い分け」
・「格助詞(1)を・に・へ」
・「格助詞(2)で・と・より・から・まで」
・「ビジネス用語&社内文書」
★研修を受講された方の感想
・学校の国語の先生より、わかりやすかった。
・助詞は苦手だったけれど、「なぜこの助詞を使うのか」の理由がわかると楽しい!
・文章が苦手なのは、自分の努力が足りないせいだと思っていたが、日本語と手話では構造が違うからだと初めてわかった。
日本語教育能力検定試験に合格した有資格者の日本語教師兼 手話通訳士が、聴覚障がい者に手話で日本語の文法を説明する講座は、日本で一つです。
テンダー日本語教室
http://nihongo.tendershuwa.com
今回ご依頼してくださったガス会社さんは、聴覚障がい社員さんのことを、とても大切に考えていらっしゃいました。
来年度入社予定の聴覚障がい学生も交えて、日本語研修をご依頼してくださいました。
温かくて、本当にステキな会社でした。
このような会社が、日本に増えるといいなぁ…と、心から思いました。
依頼してくださった人事部の方、受講してくださった皆さま、お疲れ様でした(*^_^*)
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Posted in 日記 | 2 Comments »
“聴覚障がい者の雇用には、日本語研修が不可欠です!” への2件のフィードバック
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私は関西に住む30代の生まれつきの重度聴覚障害者です。
私自身は日本語を操る事に全く問題ありません。
若い聴覚障害者からといって、日本語を普通に操れるわけではないようですね。
確かに、筆談すればいい、とはよく聞きます。
ですが、むしろ健聴者の方の、文章がおかしい、漢字を間違えてる、という場面に出くわします。
手話通訳も、例えば病院で、通訳者の語彙不足により、筆談する、自分が発声しながら、医師と会話した方が円滑に行く、という話も聞きます。
話を戻して、日本語の助詞は使いこなす事が難しい、とよく言われてますが、私は読書・テレビ字幕の視覚情報のお陰で普通に使いこなせるようになりました。
こんな事言ったら、叱責されてしまうかもしれませんが、周りの聴覚障害者が文章を間違えてる場面に遭遇すると、優越感に浸ってしまったり、見下してしまう事があります。
鈴木様の今後の、更なる活躍を期待しております。
コメントありがとうございます。
ある大学の先生の調査によると、聴者は、生まれてから3年間の間に1万5,000時間日本語を聞いているそうです。
その1万5,000時間の日本語のシャワーを浴びずに、日本語をちゃんと習得なさるのは、素晴らしいですね!
ただ、一つだけ文章を直してよろしいでしょうか?
✖︎「若い聴覚障害者からといって、」
○「若い聴覚障害者だからと言って」
〈解説〉
「から」という言葉に接続する場合、
名詞+だ+から →「聴覚障害者だから」
イ形容詞+から →「可愛いから」
ナ形容詞の語幹+だ+から →「きれいだから」
このようなルールがあります。
ご参考になれば、幸いです。